로그인「そら……。そんな顔をして……わたしをどうするつもりだ?」
視界の端では、リーダーたちが窓の外の景色に気を取られている。そのすぐ傍らで、俺たちは誰にも知られない、密やかで濃厚なやり取りに身を沈めていた。
♢琥珀色の晩餐と甘い罠 ギルドでの報告を済ませ、かなりの額の報酬を懐に収めた俺たちは、街で一番と評判の高級レストランへと足を運んだ。キャンドルの炎が揺れる落ち着いた店内で、豪華なコース料理と芳醇な香りのブドウジュースを楽しむ。だが、何よりも贅沢だったのは、俺の目の前で満足げに微笑む彼女の姿だった。
「どうだ、そら。似合っているか?」
食事が終わり、宿に戻ると、サナはさらに着替えてみせた。ふわりと広がる透け感のあるレースをあしらった、清楚ながらもどこか艶やかな、とびきりオシャレで可愛いワンピース。淡い灯りに照らされた彼女の肌は、昼間よりもずっと白く、滑らかに輝いて見える。
「……すごく似合ってるよ。可愛いすぎて、直視するのが大変だ」
俺が正直な感想を漏らすと、サナは嬉しそうに頬を緩め、そのまま俺の隣へと滑り込んできた。
「ふふ、ならもっと近くで見れば良いではないか」
彼女は俺の腕に自分の細い腕を絡め、隙間がないほどぴったりと身を寄せてくる。ワンピース越しに伝わる体温は驚くほど熱く、彼女が動くたびに、甘く華やかな香水の香りが鼻腔をくすぐった。
サナは俺の肩に頭を預け、上目遣いでじっと俺を見つめる。その瞳は、昼間の馬車で見せたような熱っぽい光を宿していた。
「今日の報酬で、こんなに素敵な時間を過ごせた……。でも、一番の『お祝い』はまだ貰っていないぞ?」
彼女の指先が、俺の胸元を弄ぶようにゆっくりと這い上がる。そのまま俺の首に腕を回すと、吐息が触れ合うほどの距離で、桃色の唇を微かに震わせた。
「……そら。わたしを、もっと困らせてくれても良いんだぞ?」
昼間の「指」のやり取りを思い出したのか、彼女の瞳には明確な期待と、抑えきれない独占欲が渦巻いている。豪華なディナーの余韻など吹き飛ばしてしまうほど、目の前の彼女の存在感は圧倒的で、そして甘美だった。
期待に満ちた瞳で見つめてくる彼女の熱にあてられ、俺の心臓はさっきから高鳴りっぱなしだった。だが、ただ翻弄されるだけでは「未来の旦那様」の名が廃る。俺は少しだけ口角を上げると、彼女の腰を引き寄せ、その耳元に顔を寄せた。
「サナ。そんなに可愛い格好をしてるんだから、ボクからも一つ、お祝いをさせて」
「ん……? お祝い……?」
不思議そうに小首を傾げる彼女の隙を突き、俺はそっと自分のステータスウィンドウを操作した。新しく手に入れた『絶対的な支配者』のスキル群——その中の『絶対支配』の出力を、極限まで絞り、彼女一人だけに、しかも「心地よい重圧」として届くように精密に調整する。
部屋の空気が、一瞬で蜜のように濃密な重さを帯びた。
「あ……っ」
サナの身体がビクンと震え、俺の胸に力なく倒れ込む。支配のオーラに包まれた彼女は、まるで全身の力が抜けてしまったかのように、潤んだ瞳で俺を見上げた。
「なに……これ……。身体が、熱くて……動かない……」
「神をも越える支配者の特等席だよ。サナだけは、こうしてボクの腕の中で、何も考えずに甘えていいんだ」
俺は動けない彼女の細い顎をそっと指先で持ち上げると、逃げ場のない至近距離で、その桜色の唇に深く、吸い付くような口づけを贈った。昼間の悪戯とは違う、支配者の独占欲を込めた長い抱擁。
ようやく唇を離すと、サナは完全に蕩けた表情で、俺のシャツを握りしめたまま熱い吐息を漏らしている。
「……卑怯だぞ、そら。こんな力……こんな風に使われたら、わたし……もう、一生離れられなくなる……」
「サナを離すつもりなんて、最初からないよ」
俺が耳元でそう囁くと、彼女は幸せそうな、それでいて抗えない快感に身を委ねるような顔をして、俺の首筋に深く顔を埋めた。夜の静寂が、二人だけの甘く重い支配の色に染まっていく。
♢紫煙の誓いと永遠の隷属 「そのようなスキルを使わなくても……わ、わたしも……離れる気はないぞ……。わたしは、お前のものだしな……。とうに、わたしは、お前に完全に支配されてる……ぞっ」震える声で紡がれたその言葉は、魔王としての誇りさえも投げ打った、一人の少女としての完全なる降伏宣言だった。俺が放った支配のオーラに抗うどころか、彼女はその重圧さえも愛おしむように受け入れ、より深く俺の胸へと沈み込んでくる。
サナは紫色のアメジストのように輝く瞳を、これ以上ないほど情熱的に潤ませていた。俺の首筋に顔を埋めた彼女は、そこが自分の唯一の安息地であると確信したように、柔らかな唇を何度も、愛おしそうに押し付ける。
「……そら、愛している。神だろうが支配者だろうが、お前がお前である限り……わたしは、地の果てまでお前の後ろを歩いていく……」
首筋に触れる湿った熱と、時折触れる歯列の硬い感触が、俺の脳内を甘い麻痺で満たしていく。彼女の吐息はどこまでも熱く、俺の肌をなぞるたびに火傷のような痕跡を残していくかのようだった。
♢琥珀の夜明けと不変の信頼(徐々に日が昇ってきた……キレイだ。山で朝日が昇るのを見るのは、前世も含めて初めてかもな) 空の境界線が濃紺から鮮やかな橙色へと溶け出していく。火山の荒々しい稜線が黄金色に縁取られ、噴煙さえも神々しく輝いて見えた。前世では画面越しにしか見ることのなかった絶景が、今は肌を刺す熱気と共にここにある。 俺が小さく伸びをしたその時、リーダーのテントの入り口がゆっくりと開き、眠い目をこすりながら彼が姿を現した。「おはようございます」 俺が自然な調子で声を掛けると、リーダーは一瞬驚いたように瞬きをし、それから恐縮したように深く頭を下げた。「おはようございます。見張りお疲れ様です。……まさか、一晩中お一人で?」「おはよう」 続いて出てきた男の冒険者も、俺の姿を見て感銘を受けたような表情を浮かべている。(ちゃんと見張りをしてた事になったぞ……) 内心で冷や汗をかきながらも、俺は「気にするな」とばかりに軽く手を振った。魔法の結界で守られていたとはいえ、彼らにとっては、この危険な地で自分たちの眠りを守り抜いた英雄に見えているのだろう。 やがて他のメンバーも次々と起き出し、手際よく焚き火を熾して朝食の準備を始めた。パチパチと薪が爆ぜる音が、火山の静寂を活気に変えていく。「そら……。もう起きていたのか。冷たいな、わたしを置いていくなんて」 テントの隙間から、まだ眠たげに目を細めたサナが顔を出した。朝露に濡れたアメジストのような瞳が、朝日を浴びてキラキラと輝いている。彼女は寝起きの無防備な足取りで俺の隣に座ると、当然のように俺の肩に頭を預けてきた。 昨夜の「報酬」の余韻か、彼女の纏う空気はどこか柔らかく、それでいて底知れない魔力が満ち足りたように安定している。「おはよう、サナ。すぐ出発だから、早く目を覚ませよ」「んふふ……お前の匂いがする。それだけで、もう目は覚めているぞ」 リーダーたちが湯気を立てるスープを配り始める中、俺たちは火山の頂、ファイアドラゴンが待つ最深部へと向かう準備を整え始めた。♢焦熱の進軍と前衛の交代「朝食を食べて、さっそく出発しましょう」 俺の言葉を合図に、手早く食事を済ませて出発の準備を整える。使い慣れたテントを魔法で片付け、マジックバッグに収めると、いよいよ本格的な登攀が始まった。 標高が上がるにつ
♢桃色の限界と冷えぬ火照り「嬉しそうじゃないな。もっと遠慮せずに、そらの好きなように……触っても良いぞ?」 サナはそう言って、さらに俺の指先をお腹の深みへと誘うように、ぐいと手を引き寄せた。指先に伝わる柔らかさは増し、彼女の無邪気なまでの誘惑が、俺の理性の防波堤を今にも決壊させようとしている。(勘弁してください。そろそろ限界です……) これ以上この感触を味わい続ければ、理性が焼き切れてしまう。俺は沸騰しそうな脳内を必死で鎮めながら、意を決して彼女の手を緩めた。「そろそろ出るよ。ありがと……気持ち良い触り心地だったよ」「……ん? もう良いのか? それだけで満足したのか?」 サナは名残惜しそうに、大きなアメジストの瞳を潤ませて見上げてきた。その潤んだ瞳と、お湯から覗く白い肌のコントラストは毒が強すぎる。(これ以上くっついてこないでくれ!)「ボクは、先に風呂から出て待ってるね」 強引に立ち上がり、俺は前をタオルで隠しながら、逃げるように洗い場へと向かった。背後でサナが「むぅ……そらは気が早いな」と呟く声が聞こえたが、振り返る余裕なんて微塵もなかった。 脱衣所へ飛び込み、急いで服を身に纏う。清涼な布の感触が、火照りきった肌に心地よい。(はぁ……。落ち着いた……) 大きく息を吐き、ようやく心臓の鼓動が緩やかになっていくのを感じる。鏡に映る自分の顔は、火山の熱気よりも赤く染まっていた。 しばらくして、サナも満足したのか、あるいは少し寂しくなったのか、湯気を纏いながら浴室から出てきた。♢湯上がりの夜風と魔王の課題 浴室から出てきたサナを呼び止め、まだ湿り気を帯びた彼女の背中をタオルで拭うのを手伝う。白磁のような肌は湯上がりの熱を湛えていて、指先が触れるたびに、先ほどまでの「柔らかさ」の記憶が鮮明に蘇り、また少しだけ鼓動が速くなった。 着替えを済ませると、俺たちは再び転移を使い、火山の夜営地に張ったテントの中へと戻った。周囲はすっかり夜の静寂に包まれ、時折、遠くで火山の地鳴りが低く響いている。「お風呂、良かったなぁ! そらとの触れ合いも、最高だったぞっ♪」 テントの中、サナはふかふかの寝具の上に寝転がり、幸せそうに手足を伸ばした。「あ、うん。そうだね。疲れたけど」「疲れたのか? 大丈夫か? 今日は何も討伐はしてないぞ」(美少女のサナさん
腕を動かせば、ぎゅぅと密着た腕に伝わるその瑞々しい柔らかさが、ぬるりとしたお湯の感触と共に全身の神経を逆撫でする。華奢な体つきからは想像もつかないほど、その部分は確かな存在感を主張し、俺を優しく、けれど逃れられない檻のように包み込んでいた。「んふふ……。そらの腕、すごく熱くなっているぞ。……どうした、顔まで真っ赤ではないか」 サナはいたずらっぽく微笑むと、さらに深く、俺の腕を自分の胸の谷間へと沈めさせた。潤んだアメジストの瞳が至近距離で揺れ、濡れた睫毛が瞬くたびに、甘い毒のような誘惑が俺の理性を溶かしていく。「……我慢したのは、昼間だけだ。今はもう、わたしを抑えるものなど何もないぞ?」 湯気の中で、彼女の吐息が俺の頬を熱く撫でた。♢秘湯の誓いと桃色の余韻「我慢してたのか。そ、それはスゴいな……エライな!」 俺は照れ隠しも半分に、彼女の濡れた髪をかき分けるようにして、その小さな頭を優しく撫でた。 すると、その表情は一瞬でパァッと明るくなり、まるで春の陽光を浴びた花のように満面の笑みが咲き誇る。アメジストの瞳が歓喜に揺れ、俺の手に擦り寄るように甘えて頭を預けてきた。「ご褒美のキスはないのか?」(え、そんなシステムになってるの?) あまりに当然のように、そしてあまりに可愛らしく小首を傾げて強請られ、俺の鼓動はさらに一段階ギアを上げた。湯気のせいだけではない熱が全身を駆け巡る。 至近距離で見つめてくる彼女の肌は、お湯に温められて柔らかな桃色に染まっている。俺は意を決して、その熱を帯びた、吸い付くような感触の頬にそっと唇を寄せた。「……はい、ご褒美」 触れた瞬間に伝わる、マシュマロのような柔らかさと瑞々しい質感。彼女は一瞬、驚いたように目を丸くしたが、すぐにトロンとした甘い顔をして、俺の腕にさらに強く抱きついてきた。「おぉー、これで明日も頑張れるなっ!」「それは良かった」 自分の戦果を誇るように胸を張り、俺の腕を包み込む柔らかな感触をさらに強調させてくる。その無邪気さと、時折混じる確信犯的な色香のギャップに、俺はもう降参するしかなかった。♢湯煙の唇と魔王の独占欲「そらにもしてやるぞ」 返事をする間もなかった。強引に引き寄せられたかと思うと、目の前がアメジストの色彩で塗りつぶされる。 触れたのは、桜色をした、驚くほどぷるんとした柔ら
俺が念じたのは、俺の配下である最古のドラゴンの王・ドラキンの縄張りで、最初に住んでいたあの懐かしい家。——転移。 一瞬の浮遊感の後、視界に広がったのは、火山の乾燥した空気とは無縁の、清涼な魔力に満ちた懐かしい光景だった。ドラキンの気配が遠くに感じられる、静謐な隠れ家だ。「ここは……?」「ボクの原点みたいな場所だよ。ここなら、最高のお風呂があるんだ」(俺の始まりの場所。転生して……ここから、全てが始まったんだよな) 俺は不満げだったサナを促し、木造りの温もりがある浴室へと向かった。湯気が立ち上る浴槽には、ドラゴンの魔力によって温められた、万病を癒やすとされる名湯が満ちている。「そら、一緒に入るぞ。……当然だろう?」 サナは服を脱ぎ捨てると、まだ泥のついた足のまま、けれどどこか嬉しそうに俺の腕を掴んできた。 二人で湯船に浸かると、まとわりついていた汚れがさらりと溶け出していく。白く滑らかなサナの肌が露わになり、お湯に濡れたアメジストの瞳が、湯気越しに熱っぽく俺を捉えた。「ふふ……極楽だな。泥の不快感など、一瞬で吹き飛んでしまった」 サナは俺の胸に背中を預け、ぷかぷかと浮かぶように身を委ねる。浴室に響くのは、心地よい水音と、二人の静かな吐息だけ。火山の夜営地でリーダーたちが今頃首を傾げていることなど、今の俺たちにはどうでもいいことだった。♢湯煙に咲く紫のアメジスト(相変わらず細く、胸はふっくらとしてスタイル良いですなぁ……) 湯気で白く霞む浴室の中で、俺は何度目かもわからない感慨に耽っていた。隣に座り、丁寧に体を洗うサナの姿を盗み見るたび、こんな至高の美少女と一緒の湯船に浸かっている自分の境遇が、奇跡を通り越して何かの間違いではないかとさえ思えてくる。 サナが、洗い終えたばかりの白磁のような肌を輝かせて、俺の隣へと滑り込んできた。 お湯から覗く彼女の肩先は、華奢でありながらも瑞々しい質感を湛えている。濡れて肌に張り付いた髪の隙間から見えるうなじは、驚くほど白く細い。だが、その繊細なラインとは対照的に、豊かな膨らみを帯びた胸元が、お湯の浮力を受けてゆったりとした曲線を描き出していた。 きゅっと引き締まった細い腰から、お湯の中でなだらかに広がる太もものライン。それは、少女特有の初々しさと、魔王としての神秘的な色香が絶妙な均衡で混ざり合った
普段の彼女なら、俺の視線に気づいた瞬間に「どうだ? 今日のわたしは可愛いか?」と、これ見よがしにポーズを決めてくるはずだ。だが、今の彼女はどこか様子が違った。膝を抱え、少しだけ火照った顔でじっと焚き火を見つめている。「肉か、わたしが焼くか? 肉を焼くくらいできるぞ!」(ん? なんだか、いつもと違うぞ……どうしたんだ!?) 不意に提案された言葉に、俺は思わず動きを止めた。いつもなら俺に甘えること、俺に何かをしてもらうことを至上の喜びとしている彼女が、自ら進んで「焼く」と言い出したのだ。「サナ大丈夫か? 何かあったの?」「大丈夫だぞ? 何もないぞ」「なら良いんだけど……」 サナは火の粉を散らす焚き火に向かい、慣れない手つきで串に刺した肉をかざし始めた。その横顔は真剣そのもので、時折、熱気に耐えるように瞳を細めている。(もしかして……昨日のディナーや、さっきの『喜ばせる』って言葉を気にしてるのか?) 俺を喜ばせるために、彼女なりに「尽くそう」としているのかもしれない。そう思うと、彼女の不器用な献身がたまらなく愛おしくなった。 俺はサナが肉を焼いてくれている間に、アイテムボックスから熱々の出来立てのスープを取り出し、彼女の隣にそっと置いた。「ありがとう、サナ。これ、飲みながらやって。火の側は暑いだろ?」 サナは一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐにアメジストのような瞳を蕩けるように細めて俺を見上げた。「……ん。そら、優しいな……」 彼女はスープの湯気に包まれながら、幸せそうに、けれどどこか照れくさそうに肉を焼き続ける。背後ではリーダーたちが、俺たちの放つ独特の「新婚のような空気」に、どう反応していいか分からず必死に肉を咀嚼する音だけが響いていた。♢紫煙の誓いと健気な献身 サナが慣れない手つきで一生懸命に焼き上げた肉を、一口運ぶ。 表面は香ばしく、中は驚くほどジューシーで、塩加減もこれ以上ないほど絶妙だった。「……すごく旨いよ、サナ。上手に焼けてるよ!」 俺がそう告げると、サナはパッと顔を輝かせたが、すぐに照れ隠しをするように視線を落とした。今日の彼女は、いつもの自信満々で奔放な「魔王様」の面影がどこか遠い。アメジストのような瞳を潤ませ、俺の顔色を伺うようにチラチラと盗み見ては、甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。「そら、口元にタレがつ
「それと、もう出発するけど……良いの?」「準備は出来ています」 リーダーの答えは即座に返ってきた。足元を見れば、確かに旅の支度は完璧に整っている。俺が来るのを確信して、ギルドの裏で待機していたのだろう。「今回はファイアドラゴンだけど大丈夫? 出現するかもよ」 一応、念を押してみる。鱗の採集とはいえ、相手は伝説級の魔物だ。生半可な実力では、遭遇した瞬間に塵も残らず焼き尽くされる。「覚悟は出来てます」 男のその言葉に、嘘偽りはないようだった。死への恐怖よりも、高みを目指したいという冒険者としての矜持が勝っている。「……そら、どうするのだ? わたしは、お前さえ良ければ、この者たちの羽虫のような羽音くらいなら我慢してやるぞ」 サナは少しだけ不服そうに、けれど俺の判断を尊重するように寄り添ってくる。彼女にとっては、俺との二人きりの時間を邪魔されるのは本意ではないだろうが、俺が許可を出すなら異論はないといった様子だ。「分かった。じゃあ、一緒に行こう。ただし、自分の身は自分で守ってくれよ」 俺が頷くと、彼らは一様に安堵したような、それでいて新たな戦場へ向かう高揚感に満ちた表情を見せた。♢灼熱の麓と再度の案内「じゃあ行こうか。って……みんなで移動するなら、馬車を探さないとだよな」 ふと思い立って口にすると、リーダーは待ってましたと言わんばかりに頷いた。「馬車の手配は出来ています」「準備良いね。助かったよ!」 俺が感心して告げると、彼は少しだけ誇らしげに表情を緩めた。そのまま彼らが手配していた馬車に揺られること二日間。街道を抜け、景色が次第に荒涼とした岩場へと変わっていく。辿り着いた先には、以前の山とはまた違う、噴煙を上げる禍々しい巨躯がそびえ立っていた。「リーダーは、今回の目的地も詳しいの?」 馬車を降り、乾燥した熱気に目を細めながら尋ねる。「何回か別件で訪れた事があります」「案内も頼めるかな」「お任せください! また、途中で夜営になります。準備は大丈夫ですか?」 リーダーの頼もしい返答に、俺は隣で「ふむ、また野宿か……」と、どこか楽しげに俺の腕を引き寄せている彼女の感触を確かめながら頷いた。「うん。問題ないよ」「では、行きましょうか」 一行は再び、リーダーを先頭にして険しい山道へと踏み出した。足元からは地熱が伝わり、空気は微かに
♢望の視線と戸惑いの出立 ギルドの重厚な扉へ向かおうとしたその時、背後からこれまでの「ひそひそ話」とは明らかに質の異なる気配が押し寄せてきた。それは恐怖や困惑ではなく、純粋な憧れと熱量を孕んだ、真っ直ぐな羨望の眼差しだった。「お気をつけて! そらさん」 一人の男が、拳を握りしめて熱のこもった声を掛けてきた。それを皮切りに、次々と声が上がる。これまでの「化け物を見るような目」とは正反対の、温かくも眩しい視線が背中に刺さる。「頑張ってくださいね。そらさん」 少し離れた席にいた女性冒険者も、頬を微かに染めながら、祈るように両手を合わせてこちらを見送っている。その潤んだ瞳には、死地へ向かう
♢暁のギルドと炎竜の徴用 翌朝、活気を取り戻し始めたギルドに足を踏み入れ、いつもの受付へと向かう。そこには見慣れた笑顔があった。朝日が差し込む窓際で、彼女は背筋を伸ばし、昨日とは打って変わった快活な様子で立っている。「そらさん、そらさんっ! わたし、このギルドの受付に戻ってこれました!」 昨日、宿の廊下で肩を落としていたのが嘘のように、彼女は晴れやかな顔で俺たちを迎えてくれた。その声はギルドの喧騒に負けないほど清々しく、彼女自身の居場所を取り戻した喜びが全身から溢れ出している。「良かったですね」 俺が心底安堵したように声をかけると、彼女は「はいっ!」と元気に頷いた。「……あれ?
「『しばらく休み』なのだろう? なら、誰にも邪魔されない時間をたっぷり堪能させてもらうぞ……」 彼女は俺の手を引き、再びあの柔らかなベッドへと誘う。サナの指先が俺の指の間に入り込み、力強く、そして逃がさないと言わんばかりに絡め取られた。外の世界で俺たちが「神を越える存在」や「恐るべき魔王」として語り草になっていようとも、この閉ざされた部屋の中では、ただ互いを求め合う一組の男女でしかなかった。 サナはベッドに腰を下ろすと、俺の体を自分の方へと引き寄せ、潤んだ瞳でじっと見つめてくる。彼女の吐息が至近距離で重なり、静まり返った室内には、二人の高鳴る鼓動の音だけが響いていた。♢琥珀色の休息と不
♢専属受付嬢と隣室の仕事場 受付嬢は気まずい空気から逃れるように、パンと景気よく手を叩いた。そして、先ほどまでの困惑を強引に塗りつぶすような、少し上ずった高い声で本題を切り出した。「あ、そうでしたっ! お知らせがあってきました」 彼女は手元の書類を胸元で抱き直し、意を決したように俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。その瞳には、使命感とどこか諦めに似た色が混ざり合っていた。「ギルマスの突然の思い付きで特別待遇なんですが、私、そらさんの専属の受付嬢になり隣の部屋で受付の仕事をやらせて頂く事となりました」「え!? 意味が分からないんですが……」 あまりに突飛な人事異動に、俺は思わず開いたド